理科と電子工作

理科 当時の頃の日の入り時刻

冬至の頃の日の入り時刻について

日没表

 毎年,12月の21日か22日の冬至とうじが近づくと,「冬至の日は一年で昼間の時間が最も短い日なのに,日の入りの時刻が一番早い日ではなく,日の入りが一番早い日は,十二月の初め頃である」ということが話題になります。
 このことは,不思議なことと思われているようで,ときどきマスコミで,この理由を説明していますが,まともな説明に出会ったことがありません。
 本に書かれてある説明では,正しく説明をしてあるものと,ピント外れのものとが,混在しています。(現在,こういうことを説明している本は,出版されていないようです。)

 そういう状況ですので,理科の科目として,このことについて説明しようと思います。
 この問題は,ちょっとした勘違いが原因で,とくに難しいことではありません。中学理科程度の知識で十分理解できると思います。

 なお,ここで使用するデータは,国立天文台のれき計算室のサイトから得ています。

時計の時間と太陽の運行について

 日の入り時刻が一番早い日が冬至の前に来ることを不思議に感じるのは,時計の時刻と太陽の運行とが合っていると思っているからだと思いますが,実はそうではないのです。
 時計の時刻は,太陽の運行をもとに決めてはあるのですが,ぴったり合っているわけでもないのです。

日没表

 太陽が作る影で時刻を測る,左の写真のような日時計ひどけいというものをご存じだと思います。
 日時計による時刻は,当然ですが太陽の運行とぴったり合っています。
 天体がその地の真南に来ることを南中なんちゅうと言いますが,日時計では太陽の南中を正午しょうご(昼の12時)として,時刻を決めてあり,日の出から正午までと,正午から日の入りまでの時間は同じになります。
 この日時計が表す時刻では,日の出が一番遅く,日の入りが一番早い日は,冬至の日になります。
 ところが,通常の時計では,太陽の南中時刻はほとんどの場合12時にはならず,日の出から12時までの時間と12時から日の入りまでの時間は同じではないのです。
 地域によっては,日時計の時刻と普通の時計の時刻が一致することもありますが,厳密にはそれは一瞬のことで,日時計と普通の時計では,時刻に差があり,その差は日々変化しているのです。

視太陽と平均太陽

 現実の太陽を視太陽したいようと言います。実際に目に見える太陽ということです。(他に真太陽しんたいようと言うことばもあります。別項で説明します。)  日時計は,視太陽の運行により時刻を表示する時計ですが,このような時刻・時間を視太陽時したいようじと言い,その一日を視太陽日したいようじつと言います。

 視太陽日(日時計の一日)は,驚く方もいると思いますが,ピッタリ24時間ではないのです。24時間より長い時期と短い時期が交互にあります。秋分の日頃には,24時間より約22秒短くなり,冬至の頃には,約30秒長くなります。

 と言っても地球の自転の速さが変化するわけではありません。
 視太陽日が24時間より長くなったり短くなったりする原因は,地球の公転軌道こうてんきどう(地球が太陽の周りをまわる軌道)が真円しんえんではなく楕円たえんだということと,地球の自転軸じてんじく公転軌道面こうてんきどうめんに対して傾いていることによります。(このことの詳しい説明は,別項で行う予定です。)

 視太陽時では,現代生活では不都合なことが起きますので,現在一般に使われている時間は,毎日ぴったり24時間で運行する平均太陽へいきんたいようという仮想かそうの太陽の運行をもとにした,平均太陽時へいきんたいようじというものです。平均太陽時の一日を平均太陽日へいきんたいようじつと言います。
 そういうわけで,視太陽と平均太陽の運行には差があるので,現実の太陽の運行と時計の時間は合わないのです。

 視太陽時と平均太陽時の差を均時差きんじさと言います。
 均時差は意外に大きく,±約16分の間を変化しており,年に4回0になる一瞬があります。
 東京での南中時刻は,2月11日頃には,11:55ほどになり,11月4日頃には11:24くらいになります。
 なお,視太陽時でも平均太陽時でも一年の長さに違いはありません。

 日本で普通の時計に表示される時刻は,日本中どこでも同じ日本標準時にほんひょうじゅんじというもので,平均太陽が明石市などを通っている東経135度の地に南中する時刻を,お昼の12時と決めてあるものです。(当然ですが,平均太陽を見ることはできません。)

 ところが太陽は東から西に移動しますので,普通の時計と日時計を比べると,日時計の時刻は東に行くほど進み,西に行くほど遅れます。
 つまり時計の時間で見る日の出・南中・日の入りの時刻は地域によって変わってきます。東に行くほど早くなり西に行くほど遅くなります。
 この違いは,日の入りの一番早い日が冬至の前に来る現象とは関係ありませんので,混同しないようにしてください。

 均時差は,一年を通して変化しており,12月のはじめに頃は太陽の南中時刻が時計の12時よりだいぶ早くなるので,日の入り時刻も早くなり,冬至では,南中時刻が遅くなってくるので,日の入り時刻の一番早い日が冬至の日より前に来るということが起きるのです。
 日の出と日の入りは,視太陽の現象ですが,その時刻を平均太陽の運行による通常の時計でみているので,不思議なことが起きているように見えるのです。
 視太陽と,平均太陽の違いがわかっていれば,不思議でも何でもないことなのです。
 夏至の頃にも同様なことが起きていますが,変化が小さいので,あまり話題になりません。

2024年の東京の冬至の頃の南中と日の入の時刻

 それでは,冬至の頃の太陽の動きと時計の時間の関係を東京の場合を例にとって具体的に見てみましょう。
 2024年の冬至は12月21日です。

 下の図の表は,国立天文台 > 天文情報センター > 歴計算室 > 「各地のこよみ」の東京の2024年12月のページの冬至前後の十日ずつ,11日から31日までを抜き出したものを,「通常の時計による時刻・時間」欄に記入し,「日時計による時間」の欄を加えてあります。それぞれの欄に「午前時間」と「午後時間」計算して入れてあります。
 ここでは,午前は日の出から正午まで,午後は正午から日に入までの意味で使っています。
 なお,日の出と日の入り時刻は,分単位で発表されています。

日没表
日没グラフ

 この表の,日時計による時間の午後時間の欄を見ますと,日々の時間の差はあまりありません。ところが,南中時刻を見ますと,12月11日よりも21日(冬至)ほうが,5分遅くなっています。
 その分時計による午後の時間が長くなっているので,時計による日の入り時刻が遅くなっているのです。
 この時期は,日時計に対して普通の時計が進んでいっているので,日の入り時刻が遅くなっていくと言うこともできます。

 右下のグラフは,日時計と普通の時計の正午の関係を日時計を基準にして描いてあります。
 普通の時計の正午の時刻が,12月11日から12月21日にかけて日時計に対して進んでいっているので,普通の時計による午後の時間が,だんだん長くなっていることが読み取れると思います。

 ここでは,東京の例を挙げましたが,北へ行くほど日の入り時刻の一番早い日は,冬至の日に近づき,南に行くほど冬至よりずっと前になります。
 札幌では,日の入り時刻の一番早い日は,12月3日から12月15日の間ですが,那覇では,11月24日から12月6かの間です。
 このことは,北へ行くほど日の入り時刻の日ごとの変化時間が大きいためです。

 日の出時刻についても同様なことが起きていて,冬至の後に日の出時刻の一番遅い日が来ます。

 最後に

 私は,小・中学の理科は得意で天文に関することも好きだったのですが,このページに書いたようなことは,大変分かりにくかった覚えがあります。
 なるべくわかりやすく説明したつもりですが,回りくどくてかえってわかりにくくなったのではないかと気がかりです。
 今回は,これでアップしますが,ご意見・ご要望によっては,書き直すつもりです。

CopyLeft 鈴木京太