古いアナログテスターの
22.5v乾電池の代替電源について
22.5V 積層乾電池
アナログテスターは、電圧や電流の計測には電源を必要としませんが、抵抗測定には内臓の乾電池を使用します。
よく見かけるテスターでは単三乾電池を一本か二本内蔵していています。
高い抵抗値が測定できるタイプのテスターでは,単三乾電池二本と角型9V積層乾電池(006P)を内蔵しているものもあります。006P乾電池は抵抗値測定の最高レンジ専用です。
古いテスターの中には,高抵抗測定用に 22.5V の積層乾電池(BL-015)を使っているものがあるのですが,現在この乾電池の入手は非常に困難な状況です。
右の写真の左側が22.5V の積層乾電池です。見たことのない方もいると思いますので,参考までに。
このタイプのテスターをお持ちの方は,この電池を入れてなくても,抵抗測定レンジのうち最高レンジのみ使えないだけですので,そのレンジの使用をあきらめていたり,またボタン電池を15個直列にして使ったりなどしているようです。
私もこの電池を使用するテスターを何台か持っていて,22.5V乾電池の代わりになる,何か良い方法がないか考えていました。
思いついたのが,「秋月電子通商」から販売されている,昇圧型 DC-DCコンバーターキットを使う方法です。
秋月のキットで,2.3V以上の入力で 最大25Vまで出力できる可変電圧コンバーターがあります。
基盤の寸法が3cm角ですので,テスターに組み込むのは簡単そうで,22.5V積層乾電池の代わりになると思ったのです。
しかし,この方法ではコンバーター用の電源(乾電池二本)が別に必要になり、そのスイッチが必要になります。スイッチを取り付けたとしても操作が面倒だし,切り忘れると電池が消耗してしまって,次に使うとき電池を入れ替えなければならなくなったりと,問題がありそうです。
などと考えながらテスターの回路図を見ているとロータリースイッチを電源スイッチとして使えるのではないかと気づきました。
スイッチの切り忘れ問題は残りますが,やってみる価値はありそうです。
ということでやってみました。
なお,テスターのロータリースイッチで電源をON-OFFすることは,あまりよくないのですが,やってみることにしました。ご自分で製作する場合は自己責任でお願いします。
SANWA CX-505
組込みに使ったテスターは,SANWA CX-505です。このテスターは内部のスペースに余裕があり、今回の組み込みに最適だと思ったからです。
このテスターの×10kΩレンジで22.5V乾電池を使っています。
右の写真は CX-505 の外観と内部の写真です。
内部の写真の上の方に 22.5V の積層乾電池,上部左側に単三乾電池が二本入っています。
この写真の22.5Vの電池はとっくに使えなくなっているものですが,撮影のために入れました。
この 22.5V乾電池の代替として,前記のコンバーター基盤を組み込もうと言うわけです。
改造前と後の回路図
右の回路図の左が,CX-505の抵抗測定回路の回路図です。右が組込み設計図です。
コンバーター電源として,単四乾電池を二本使う設計です。
この回路図を参考にご自身で改造していただけばよいのですが、参考までに私がやった方法を紹介します。
この改造をするにあたり,問題のあるタイプがあります。私はこの機種を二台所有していて,そのうちの一台は,回路図に「この接点がないタイプもある」と記入された接点がないので,接点を増設して見ました。増設した方法は後で説明します。
今回使用したコンバーター基盤
右の写真が今回使用した,コンバーター基盤です。パッケージ全体と取り出した基盤です。基盤は一辺3cmの正方形です。
地元の電子部品店で秋月電子のキットを扱っているので,そこで購入しました。秋月電子のネット価格より少し高く設定してありました。
スペックの詳細は,秋月のサイトで確認してください。2024年6月現在秋月電子通商のサイトの,キット一般,電源キット,にあります。
キット番号は,k-04377で,ネット価格は¥650です。
接点増設
右の写真の一番左が,接点があるもので,×10kレンジの,つまようじの頭の所に,どこにも接続されていない接点があります。
二番目の写真には上記の接点がありません。このテスターには接点を増設してみました。三番目の写真が加工後の物で,1mmの穴を4固あけ, 0.6mm のスズメッキ線を通して裏側でまとめて接点を作りました。
一番右の写真が元通りに組み立てた状態です。
二台とも裏側でリード線をハンダ付けして,引き出してあります。
右の写真の軽く結んである少し太い黒線が,新たに取り付けたリード線です。
コンバーター基盤を組み込む
右の図の左が元の回路の実態図,右が組込み図です。
組込みの実際
まずキットを組み立てます。
と言っても,今回使ったタイプは,昇圧とスルーの切り替えができるスイッチを取り付けるようになっているのですが,スルーの必要はないのでスイッチを取り付けずに,昇圧側にジャンパ線をハンダ付けしたのと,多回転可変抵抗器を取り付けただけです。
電解コンデンサは,テスターに組み込む直前に取り付けました。
キットには,ピンヘッダとリード線が入っていますが,ピンヘッダは使わず,リード線も手持ちの物を使いました。このあたりは好きなようにして下さい。
リード線を取り付けたら,出力電圧を22.5Vに調整するのが良いと思います。特にほかにテスターをお持ちでない方は,ここでやってください。ただし,あとで微調整もできますので,キチッと合わせなくても問題ありません。
リード線をはんだ付けするときに,テスター側の線は細くて皮が向きにくいと思います。こういう場合は,線の皮をむく部分をライターの火であぶり,燃え上がったところを指でつまんで,爪でしごくようにするときれいに向けます。比較的知られているやり方ですが,一応書いておきます。
コンバーター基盤の取り付けは,ペットボトルを加工して,取り付け台を作りました。
右写真の左側がペットボトルを加工したもので,折り目は外側にカッターで切れ目を入れてあります。
右側の写真は,わかりやすいように紙で作ったものです。
これと同じにする必要はありませんが,テスターに取り付けるためのネジや接着剤等を使わずに済みました。
基盤は取り付け台にネジで取り付けましたが,ペットボトルから切り出した自作のワッシャを挟んでいます。金属ワッシャでも大丈夫そうですが,念のためにこうしました。市販のプラワッシャーを使うのもよいと思います。
右の写真が組み込んだ状態です。組付けの前に電解コンデンサを写真の位置に取り付けました。
単四乾電池二本用の乾電池ボックスを,取り付け台と一緒に22.5V電池ホルダーに押し込んで固定してあります。反対側はロータリースイッチ基盤の下に差し込んであります。
cx-505は,裏蓋が深いので,問題なく収まっています。ほかの機種では,同じようにはできないと思います。
あとは最終調整です。
×1kレンジで,0Ω調整をし,×10kレンジにすると,このテスターの場合は,メーターの針がフルスケールまで振れません。
このままの状態で,コンバーター基盤の可変抵抗器で,0Ω調整をしました。このほうが使いよいと思います。
×1k以下用の乾電池が消耗してくると,また違ってくると思いますが,一応このようにして使っています。
0Ω調整後コンバーター出力電圧を測ると,約23.6Vでした。
LEDチェッカー組込み
×10kレンジでは,LEDの点灯確認ができるのですが,品種によっては点灯状態がよくわからないものもあります。
そこで,使うことのないAC1.2kV測定用の端子をLEDチェック端子として使えるようにしました。
1.2kV測定用端子につながっている7.2MΩの抵抗を外し,2kΩの抵抗を取り付けて,基盤の 22.5V出力に接続してあります。
この機能は,はかなり便利です。AC1.2kV端子からプラス入力端子に向かって電流が流れます。
待機電流
以上完成ですが、×10kレンジは測定をしていなくても電池が消耗します。待機電流の測定をしておこうと思います。
乾電池電源の場合には,次のようにして電流測定ができます。
右の写真の左は,アルミ粘着テープの切り出し片と紙片です。
アルミ片の一方の端をを折り返し紙片に貼り付けます。少し余白を残して紙の外形を整えます。
紙の裏側にもアルミ片を張り,右の写真のようなものを作ります。
上で作ったものを電池ボックスの端子と乾電池の間にはみます。ちょっとコツがいりますが,やり方を工夫してください
クリップ付きのテスターリードを使うか,テスト棒にクリップリードをつけるかして,それぞれのアルミ片をクリップを接続して電流を測定します。
電流値は約30mAで意外に大きな電流でした。LED二本分程度の電流でしょうか。
使用していないときには他のレンジに切り替えておかないと電池の消耗が早いかもしれません。どうぞお忘れなく。