電気 初歩
乾電池と豆球
電気 初歩ということで,小学校理科レベルの電気について書きますが,内容は初歩から,少々難しいことにまで及んでいます。
私は,小学校時代から理科が得意で大好きでしたが,それでも豆球や乾電池の直列・並列については,大変難しく感じたと記憶しています。
まあ,何とか覚えて通りすぎたのでしょう。
そういう私の記憶とその後の経験から,こういうページはどうだろうという内容のものを書いてみました。
このページに書いたことは,小学生レベルですが,小学生向けというわけではなく,中学生の復習と中学理科の電気につながる内容として書いてみました。
乾電池を使って豆球をつけてみよう
まず初めに,乾電池と豆球それに導線付きソケットを用意して,上の写真のように豆球をつけてみましょう。
左の写真が,乾電池と豆球と導線付きソケットです。導線はふつうの言い方では電線ですが,電気の教科では導線と言います。
ソケットについている線だけでなく,乾電池と他の物をつなぐ電気の通り道の線も導線と言います。
導線は中心に金属の銅でできた線が入っていて,その外側を電気が流れないもの(絶縁物)でおおってあります。その部分を被覆と言いますが,ふつうは皮などと言います。
乾電池は,コンビニなどで購入できますが,豆球と導線付きソケットの購入は難しい場合があるかもしれません。
豆球や導線付きソケットは,以前はホームセンターで売っていたのですが,近くの二店のホームセンターに行ってみたところ,一店にはありましたが別の一店には置いてありませんでした。店員の方に聞いてみたのですが,少量の取り寄せはできないとのことでした。
それでためしに,ネットの「マルツオンライン」で買ってみました。
買ったものは,導線付きソケットは「E10ソケット パイロ電子」,1.5V豆球は「G11E101.5V」,2.5V豆球は「G11E102.5V」です。
商品記号中のE10というのは,電球のネジ部分(口金といいます。)の直径が10mmという意味です。ぴったり10mmというわけではなく,実際に直径を測ると9mmちょっとでした。ちなみに家庭用の電球の口金はE26です。
私が買った導線付きソケットは,右の写真のように導線がつながった状態で販売されていますので,導線の真ん中あたりで切って,皮をむかなければなりません。
マルツオンラインではほかに「LB-E10-C」導線付きソケットも売っており,赤・緑の二本線で,導線のはしはむかれていますので,工具を持っていない方は,そちらを買った方がよいかもしれません。
しかし,導線を切ったり皮をむいたりすることは,電気実験や電子工作では必ずやらねばならないことです。
工具をお持ちでない方のために,カッターを使う方法を説明します。ハサミで切るとハサミの刃を痛めることがあります。
まず導線を切るには,右の二枚の写真のよう段ボールの切れ端などの上で,導線の真ん中あたりをカッターの刃で強めに押さえながら,それぞれの写真のように,導線を前後に何回か半回転すると切れます。
次に皮むきですが,導線をまっすぐにして,これも段ボールの切れはしなどの上で,左はしの写真のようにカッターの刃を軽く押し付けるようにして,数回引くと線の裏まで切れます。
皮を左右に開けば中の写真のように細い銅の線を束ねたもの(芯線または心線と言います。)が現れます。
芯線の細い線が1~2本切れたりするかもしれません。芯線が切れて本数が減るのはよくないのですが,このページでする実験ていどならよいでしょう。
左右に開いた皮を切り取ると,上の右端の写真のようになります。皮の切り取りは,ハサミでも大丈夫です。
芯線のはしは,軽くよじっておきましょう。
これで最初の写真のように,豆球をつけてみることができるようになりました。
導線付きソケットに豆球をねじ込み,導線のはしの皮をむいたところを,乾電池のいっぽうの少し飛び出たところと,もう一方の平らなところに当てると最初の写真のように豆球がつきます。
このページの写真は,導線を乾電池にセロテープ止めてあります。このようにするときには,セロテープを強めに引っ張りながらやるとうまくいきます。
実態配線図
豆球がちゃんとついたところで,勉強につなげましょう。
右の図は,乾電池一個で豆球一個をつけている状態を図にしたものです。このような図を実態配線図といいます。
実態配線図は実物の状態を描いたもので,もっとスケッチ風に描くのが普通ですが,私は絵を描くのが苦手なので,このように描きました。
これでも絵を見ただけで乾電池と豆球をつないであることがわかると思います。このページでは,このような実態配線図で話を進めていきます。このあと実態配線図を単に配線図あるいは図と書きます。
乾電池 回路
乾電池は,凸型に飛び出しているほうをプラス電極またはプラス極,反対側の平らなほうをマイナス電極またはマイナス極と言います。
以後,プラス極は+極あるいは+,マイナス極は-極あるいは-と書くことにします。
乾電池に豆球をつなぐと豆球の中にあるフィラメントに電気が流れ,フィラメントが光ります。このように電球などに電気が流れて光が出ることを電気が点く,あるいは点灯と言います。
豆球に流れる電気は乾電池の中から+極に出て,導線を通り豆球を通って,また導線を通り-極から乾電池の中に,ぐるっと一周して流れます。この一周している状態を電気回路,ふつうはたんに回路と言います。
回路に流れている電気を電流といいます。
乾電池と導線と豆球で回路ができていると,豆球に電流が流れ豆球が点灯します。
電池と電圧
電池は文字の印象から,内部に電気をためてあると思いがちですが,そうではなく電池の内部に入っている物質どうしで化学反応が起きて電気が作られているのです。電気を作り出すことを発電と言います。
乾電池には,1.5Vの表示があります。これは発電で出来た電気の電圧の表示です。この電圧とは,電気を流そうとする能力の大きさのことです。
1.5VのVは電圧の単位でボルトと読みます。
ただし,乾電池の1.5Vという表示は,公称電圧と言うもので,実際の未使用の乾電池の電圧に近くて区切りのよい数値をとったものです。目安の電圧という程度のものです。
新品の乾電池は,内部で-極から+極に向かってつねに1.5V(実際はもう少し高い)の電圧を発生しています。
現実の乾電池は使用していると,しばらくは約1.5Vの電圧が続きますが,そのうちだんだん電圧が低くなってきて,やがて使えなくなります。
しかし,理科の学習では現実には存在しない理想的な,つねに1.5Vの電圧を発電し続けることができる乾電池があると考えます。
授業の時に使うぐらいの時間なら,現実の乾電池でも理想的な乾電池と同じと考えることができます。
乾電池のように電気を続けて発生させることのできる物や装置を電源と言います。
ちなみに,電源にはいくつかの種類があり,使用状況によらず一定の電圧を発生し続ける電源が最も一般的で,定電圧電源と言います。乾電池のほかに,自動車のバッテリーや家庭に来ている電気とか電源アダプターも定電圧電源です。身の回りのほとんどの電源は定電圧電源として取り扱えます。
右図の左側は,乾電池に豆球をつなげた図ですが,乾電池には+極と-極の間に1.5Vの電圧があるので,導線でつないである豆球に乾電池から1.5Vの電圧がかかっているということを表しています。
よく,電圧がある,電圧をかける,電圧がかかっているなどの言い方をします。
図の右側は,電圧についての違う表現の図で,乾電池の-極を電圧の基準点として0Vと決め,+極は基準点より1.5V高いと考えるのです。(電圧は,高い低いという言い方をします。)
どの点を0Vとしてもよいのです。+電極を0Vと考えるとマイナス電極は,-1.5Vということになります。
理科の授業で扱うような回路では,乾電池の-極を0Vと決めるのが考えやすいと思います。
東京スカイツリーの高さは634mあるなどと言いますが,地表を0mとして,塔の先端は地表から634mのところにあると言ってもおなじことです。高さが634mあるということは,先端と地表の差が634mあるということです。
電池の電圧についても,+極と-極の間の電圧は1.5Vなのですが,-極を0Vと決めて+極の高さが1.5Vだ,という考え方もできるということです。
図の右側の考え方では,乾電池の1.5Vという電圧は,+極の電圧とマイナス極の電圧の差であると考えることができます。
また,電極につながっている導線部分の電圧は電極と等しいので,-極から豆球までの導線(少し太く描いてある線)も0Vで,同様に+極から豆球の間の導線も1.5Vです。
そうすると,豆球の導線部分の片側が0Vで,もう一方の導線部分が1.5Vということになります。
電気の回路について考えるときに,このような考え方をすると,回路が理解しやすいと思います。
(※通常このような説明をするときには,起電力や電位や電位差という言葉を使うのですが,この時点では言葉の数を増やさないように,電圧という言葉で説明しています。電位や電位差という言葉があるということを頭の隅にとどめておいてください。)
豆球の並列つなぎ 直列つなぎ
ここからは,豆球の並列つなぎと直列つなぎについて書きます。
並列とは,ならんでいるという意味で,直列とは,ひとつながりになっているという意味です。
右の写真の左側が,乾電池一個で豆球を二個並列につないだもので,右側が直列につないだものです。
写真の乾電池と豆球は,同じものを使っているのですが,見てすぐにわかるように,豆球の明るさが全く違いますね。
左の図は上の写真を配線図にしたもので,図に電圧を書き込んであります。
豆球の並列つなぎの場合は,豆球を一個つないだときと同じ電流が,それぞれの豆球に流れます。
乾電池からは二倍の電流が流れ出ているのです。
直列つなぎでは,豆球が全く同じであれば,豆球一個に1.5Vの二分の一の電圧がかかります。
豆球を直列つなぎにした場合,電流や明るさを単純に計算で求めることはできないのですが,だいたいの目安で電流はおおよそ二分の一になり,豆球一個の明るさはおおよそ四分の一になります。
乾電池の並列つなぎ
それではいよいよ乾電池の並列つなぎについて考えてみましょう。
右の写真は,乾電池一本で豆球を点灯したものと,乾電池二本並列つなぎにして豆球を点灯したものです。
見てわかる通り,豆球の明るさは同じですね。
ということは乾電池がきちんと並列につながっていなくても,わからないということでもあります。この写真はきちんと確認して撮影しました。
左の図は,乾電池一本で豆球を点灯しています。まえに説明した回路と同じです。
下の図は,乾電池二本の+極がどうし,-極側どうしを導線でつないであります。電池をこのようにつなぐことを乾電池の並列つなぎといいます。
このままでは電気は流れません。+極どうし,-極どうしをつないでも,それだけでは電気は流れないのです。
この並列につないだ乾電池に豆球をつないだのが下の図です。
少し違った二つのつなぎ方を示してあります。つなぎ方の違いで,豆球の明るさが違ったりしないのかと考える人もいると思いますので,二つのつなぎ方を示しました。
乾電池の並列つなぎでは,豆球の明るさは乾電池一本のときと同じです。
電池の-極と豆球をつないでいる導線(少し太く描いてある線)は全体が0Vで,電池の+極と豆球をつないである導線も全体が1.5Vですので,豆球には1.5Vの電圧がかかっていることになります。
乾電池を並列につないだ場合,電圧の高さに変化はありませんので,乾電池の本数にかかわらず豆球に流れる電流には何の変化もないのです。
二本の乾電池を並列につないで使用すると,一本の乾電池から流れ出る電流は半分になりますので,一本使用の場合より長く使えます。
しかし実際に乾電池を並列にして使用している製品はほどんどありません。
乾電池は,一つひとつわずかですが電圧にばらつきがあるので,理由の説明は省きますが,並列で使用すると乾電池の外側が腐って,内部の物質が漏れ出て製品にダメージを与えることがあるからです。
乾電池を並列つなぎにしてある例としては,目覚まし時計の乾電池を二本使っているタイプのものには電池が並列になっているものもあるようです。
実際にはほとんど使われない回路でも,基礎の学習としては,だいじなことです。
乾電池の直列つなぎ
次に乾電池の直列つなぎについて考えてみましょう。
右の図は,乾電池二本を直列につないで,豆球一個を点灯している図ですが,乾電池はこの図のようにつながないといけません。
電池を図のように直列つなぎにすると,点線の矢印のように,電気が下側と上側の電池を通して流れます。
直列つなぎの電圧を高さで考えると,下側の電池の-極を0Vとすると,下側電池のプラス極と上側電池の-極がくっついているところの電圧は,1.5Vです。そこから上側の電池の+極までも1.5Vですので加え合わせて,3Vとなります。電圧は,直列つなぎにすると加え合わせることができるのです。なにか物を重ねた時の高さの考え方と同じです。
図を見て理解してください。
なお,この場合は,豆球は1.5V用ではなく適切なものを使用します。
次に,別の説明をやってみます。
右の図の左側に,乾電池一本豆球一個の回路二組を上下に描いてあります。この二組の回路は,乾電池も豆球も全く同じものだとします。
この二組の回路を図の右側のように導線でつなぎます。つないではあるのですが,二つの回路をつないだ導線は,回路の一部になっていませんので,電流は流れません。
二つの回路は,お互いに何の影響も与えず,それぞれ元のままの状態です。
前にも書きましたが,導線でつながっている部分の電圧は同じになりますので,図の太線の部分は同じ電圧になります。
下側の乾電池の-極を0Vとすると,上下の回路をつないである部分(太線部)は1.5Vとなり,そこから1.5V高いところが上側の乾電池の+極となりますので,そこは3Vとなります。
ここは前の説明と同じです。
左の図の左側は,上の図の右側の太く描いた導線を描きなおしたものです。導線のカワ(被覆)を長めにむいてより合わせてあるとでも考えてください。
これでも上の図の右側と同じことなのです。
この,二本の導線を一緒に合わせた部分は,上の図に小さな矢印を描いているように,もともと同じ大きさで向きが反対の電流が流れていました。しかし,二本の導線を一緒にすると電流はお互いに打ち消しあって流れなくなります。
電流の流れていない導線は切り取っても何の影響もありません。
電流の流れていない導線を切り取ったのが図の右側です。
この回路は,豆球が二個が直列につながっていますが,乾電池の直列つなぎの最初の説明の図と同じです。
豆球に流れる電流は,乾電池一個と豆球一個の時と同じですし,豆球にはそれぞれ1.5Vの電圧がかかっていて,これも,乾電池一個と豆球一個の時と同じです。
この説明は,二個の乾電池の電圧がピッタリ同じで,豆球も全く同じものを使っているという理想的な状態を考えているのですが,実際の乾電池や豆球は,少しばらつきがあります。
それでも,ほぼこのようになります。
右の写真の左の,乾電池一本で豆球一個をつけているものと,右の乾電池二本を直列つなぎにして豆球二個を直列して点けているものは同じ明るさになっています。三つの豆球は1.5V用で,それぞれの豆球に流れる電流は同じなのです。
右下の写真は,2.5V用の豆球を使って,乾電池一本でつけたものと,乾電池二本直列にして付けたものです。
同じ豆球を使って,乾電池一本と二本直列にした場合は,これだけの違いがあります。
電気 初歩は,以上です。